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英語ナレーションにおける日本語固有名詞の発音について

英語ナレーション収録における日本語発音の難しさ

日本人が英語を発音する時、LとRの発音の使い分けやthの発音など、英語ネイティブ同様の発音再現が難しいと言われている音がいくつかあります。同様に、英語ネイティブにとっても、発音の再現が難しい日本語の音が存在します。

日本語ナレーションをもとに英語ナレーションを制作する際、例えば企業VPでは日本語の社名、博物館や美術館の音声ガイドでは人物名等、英語ナレーション台本に日本語固有名詞が含まれることが多々ありますが、英語ナレーターにそのまま読んでもらうと、こちらが期待している通りに発音できないことがほとんどです。日本語と英語では、音の違いが存在するからです。

今回は、英語ナレーターが発音しづらい日本語の音について、正しく発音してもらうための対策と併せて解説していきます。

1. 促音・長音・拗音

これら3つの音は英語には存在しない音で、英語ネイティブにとっては発音しづらいと言われています。

・促音:「がっき(楽器)」「ラッパ」など、小さい「っ」が入った音

・長音:「おかあさん」「おばあさん」など、「ー」でも書き表される、母音を通常の倍にのばした音

・拗音:「きょ」など、小さい「ゃ」行の音が付くような音

2. ローマ字の発音と英語発音の違い

日本人にとってのローマ字の発音が、英語では異なる発音になる場合が多々あります。

例えば「ri」の発音。女性の名前「Rika(リカ)」を英語ネイティブが発音するとなった場合、英語では「ri」の発音は基本的に「ライ」となるため、「ライカ」と読まれてしまうことがほとんどです。

他にも、「ke」の発音は「ケ」ではなく「キ」の発音であったり、「chi」の発音が「チ」ではなく「キ」の発音であったり等、日本人が認識しているローマ字発音が、英語ネイティブとは同じではないケースが多々あります。

3. イントネーション・アクセント

日本語は、単語にイントネーションやアクセントをつけず、抑揚なくフラットに発音する言語であるのに対し、英語は明確にイントネーションやアクセントをつけて発音する言語です。そのため、英語ナレーターにとって、日本人が話すようなフラットなイントネーション・アクセントを再現することは非常に困難です。

もちろん日本語に慣れている、もしくは日本語が話せる英語ナレーターであれば、実際の日本人同様に日本語固有名詞を発音出来ると思いますが、日本語に慣れていない英語ネイティブにとっては、上記のような音の違いがあるという事実を理解していない限り、ほとんどの場合が間違った発音で読んでしまいます。

このことから、日本語固有名詞を含む英語ナレーション収録の現場では、事前に以下のような準備が必要となります。

1. 発音指導

収録前にナレーターと読み合わせを行い、正しい発音を指導します。オンラインで顔を合わせて発音の摺合せが出来れば理想的ですが、時間等の制約の関係で読み合わせが叶わない場合は、日本語固有名詞を読み上げた録音データを送って、参考にしてもらう場合もあります。

2. スペルの書き換え

英語ナレーターが初見で発音を正しく認識出来るよう、原稿上の日本語固有名詞のスペルを書き換えます。例えば、上述した「Rika」を「リカ」と発音して欲しい場合は、実際の英語の音を考慮して「Lika」と書き換えます。ただ、書き換えるだけでは不十分な場合も多いので、「LipのLiと同じ音」といったように、フォニックスの例を用いた解説を付け加えるとこちらの意図が伝わりやすくなります。

3. スペイン語を話せる英語ナレーターを採用する

スペイン語は、母音が日本語と同じ’a’, ‘e’, ‘i’, ‘o’, ‘u’の5つであるため、スペイン人は日本語の発音がしやすいと言われています。そのため、特に指導や原稿の書き換えを行わずとも、台本を初見で正しく日本語の発音が出来るナレーターが比較的多い傾向があります。

一方で、こだわりすぎないことも実は重要

日本人の観点としては、社名や商品名等の日本語固有名詞は大切なものであるからこそ、「日本人の発音と全く同じ発音を再現してほしい」という考えが根底にあることはよく理解できます。

しかしながら、日本人がこだわる程、日本語の発音の「正しさ」は英語ナレーションにおいては意味を成さないというのが実際のところです。

日本における英語の発音について同じことが言えます。日本においても商品名や会社名をはじめとした英語固有名詞を日常的に耳にしますが、日本で浸透している発音と、英語ネイティブによる発音は異なることが分かります。

実際の例を、各ブランドの公式CMと共に見てみましょう。

例1:MacDonald’s (日本語:マクドナルド 英語:マックダーノーズ)

例2:IKEA(日本語:イケア 英語:アイキーア)

例3:Costco (日本語:コストコ 英語:コスコ)

上記の英語は、すべて日本語のローマ字発音に基づいて日本における発音が定着されているものです。仮に、IKEAの発音が「イケア」として浸透している日本において、CM等でIKEAが「アイキーア」として発音されると、多くの人にとって困惑が生まれることが容易に想像出来ます。

以上の理由より、海外市場において日本語の社名や商品名が定着していない限り、最低限の発音は押さえつつ、細かな子音の発音やアクセント位置については、プロの英語ナレーターの意見も取り入れることが、海外向けにローカライズされた英語ナレーションを制作する上で重要なポイントとなります。