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英語ナレーションのボイストーンが動画の宣伝効果に与える影響について

ナレーションの存在意義

ナレーションとは、「聴覚的な視聴者へのメッセージ」です。特にプロモーション系の動画においては、視聴者に自分が直接訴えかけられているような錯覚を想起させ、そこから人々の共感や好奇心を引き出すのに役立ちます。そういった観点で、動画制作におけるナレーション制作は、ブランディングにも影響を与える大変重要なフェーズです。

そこで、今回は英語ナレーション制作の場面で、ナレーションのボイストーンの違いが動画の仕上がりにどのような影響を与えるか、また、それによって、宣伝効果にどのような変化がもたらされるか、検証を行いたいと思います。

検証動画と英語ナレーターについて

今回の検証に使用する動画と英語台本、及び日本語字幕は、リゾート地のプロモーションビデオをイメージして当社がオリジナルで作り上げたものです。
本来は、動画の用途やターゲットにあわせた台本・字幕用の表現とするべきですが、今回は比較検証を行うためにニュートラルなトーンで文章を作成しました。

また、前回ボイスタイプ別の英語ナレーターの選び方について解説しましたが、プロジェクトの内容に合わせて自由自在に声を操り、さまざまな雰囲気を演出できるナレーターが多く存在します。
今回は当社の英語ナレーターAliceを例に、彼女がどれだけ声を変えることができるか、また、それによって、動画のイメージがどれだけ変わるかにもぜひ注目してみてください。


Alice(アリス):演技力の高さと声域の広さが評判で、ビジネス系のナレーションからアニメのキャラクターボイスまで、声の使い分けが巧みな実力派の英語ナレーター。
日本の歴史博物館の音声ガイドや伝統芸能の英語ナレーションなど、日本語固有名詞を多く含むナレーション案件も多数対応していることから、日本語の発音の上手さにも定評があります。

5つのボイストーンと完成動画

コマーシャル/ストレート

一般的なコマーシャル系の英語ナレーションに使用されることの多いボイストーン。以降で紹介する4つのタイプと比較するとやや無機質な印象があるかもしれませんが、そのフラットさが、かえって多くの人の耳に自然とすっと馴染むナレーションに仕上がっています。そのため、特定のターゲット層というよりも、幅広い層に届けたい動画との相性が良いとされます。

エレガント/ラグジュアリー

やや低めでゆったりしたテンポのナレーションが、動画を瞬時に上品でラグジュアリーな雰囲気に演出し、視聴者を映像の世界観へ引き込みます。このリゾート地に優雅さや憧れを感じさせ、高級感のあるブランディングを行うのに一役買っています。

カジュアル/キャッチー

元気いっぱいの明るいトーンで、このリゾート地を「楽しい」イメージに導きます。「エレガント」のナレーションが、高級感あふれるやや敷居の高い印象を与えるのに対し、実際に友達と会話しているかのような、カジュアルで親しみやすい印象を与えるため、視聴者にとってこのリゾート地が身近に感じられるような動画に仕上がっています。

ウィスパーボイス

吐息が多めの、少し気だるさが感じられるウィスパーボイスで、動画前半に描写されている「仕事で忙しい」ペルソナの心の声がそのままナレーションになったかのようです。それによって、ターゲット層となり得る人々の共感と関心を誘い、視聴者に内省的な感覚をもたらす動画に仕上がっています。

キャラクターボイス

最初のビジネスシーンのイメージに反するキャラクターの声が聞こえる、という多少の違和感が動画にインパクトを与え、視聴者の関心を引きつける効果をもたらしています。これも、「カジュアル」のナレーションと同様、親しみやすい印象に仕上がるため、幅広い層へのブランディングが実現します。

まとめ

各々の英語ナレーションのボイストーンによって動画の印象がここまで大きく変わることに驚いたのではないでしょうか。

また、ナレーターによってはこのように自在に声を操ることが可能であるため、ボイストーンやアクセント、テンポといった微妙なポイントに対しても明確にディレクションを行えば、理想とする英語ナレーションが必ず完成します。そして、伝えたい層へ、伝えたいメッセージを的確に届けることができます。
これは、クライアントが収録の現場に立ち会わずとも、当社で提供している海外リモート収録型の英語ナレーション制作においても、担当スタッフと密にコミュニケーションを取ることで、実現するものです。

上記の観点より、ナレーターの選定やディレクションを動画制作における重要なフェーズと捉え、ナレーションを効果的に利用していきましょう。

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翻訳におけるポリティカル・コレクトネスの重要性

ポリティカル・コレクトネスとは

近年の国際化に伴い、ポリティカル・コレクトネスが翻訳作業において重要な概念のひとつとなっています。

ポリティカル・コレクトネス:特定の言葉や所作に差別的な意味や誤解が含まれないように、政治的に(politically)適切な(correct)用語や政策を推奨する態度を指す。

Black Lives MatterやLGBTQなど、人種や性に関する多様性が求められる現代において、ポリティカル・コレクトネスの概念は国際社会において重要性を増しています。

ポリティカル・コレクトネスの中でも、特に性別に関わる概念をジェンダー・ニュートラルと言います。これは、思考、行動、制度などが、伝統的に根付いた性別による役割認識や規範に影響を受けるべきではないとする考え方を指すものです。

日本において、昨年10月に日本航空が、今年3月に東京ディズニーランドが、アナウンスで「Ladies and Gentlemen」「Boys and Girls」という文言を撤廃したのはこのジェンダー・ニュートラルに基づく判断と言えます。

今回は、日本語から英語へ翻訳する場合のポリティカル・コレクトネスの重要性および注意点について、具体的な翻訳例を交えながら解説していきます。

日本におけるポリティカル・コレクトネスの認識

欧米諸国と比較すると、日本におけるポリティカル・コレクトネスの認識は未発達と言えます。例えば、上述したアナウンスにおける「Ladies and Gentlemen」の文言撤廃は、ロンドンやニューヨークでは、すでに2017年に実施されていました。

また、ポリティカル・コレクトネスの概念が顕著に現れるのは職業名です。

日本語でも「看護婦」「看護師」と呼ばれるようになったり、「保母さん」「保育士」と呼ばれるようになったり等、特定の性別が想起される職業名は、そうでない表現に移行、浸透しつつありますが、一方で、「女優」や「カメラマン」といった言葉もまだ存在し、「俳優」や「フォトグラファー」といった言葉へ完全に移行されていないことが分かります。

このように、ポリティカル・コレクトネスの概念が浸透していると言い切れない日本において、企業や個人が海外向けの文章を作成することは、欧米諸国の人々にとって問題視されたり、敬遠されたりするような不適切な表現を、気づかぬうちに含んでしまう可能性をはらんでいるとも言えます。

実際の例を見ていきましょう。

日本で見られるポリティカル・コレクトネスの例

1.「女性でも簡単に~できる」

例えば、使用方法が難しかったり、体力が必要だったりする製品について、「女性でも簡単に~できる」という表現が、日本の製品プロモーション等で見受けられます。しかしながら、これは欧米ではポリティカル・コレクトネスに反する表現となります。

そのため、翻訳では、「専門知識が無くても」「体力に自信のない方でも」のように、状況に応じて言い換える工夫が必要です。

2.「美白」

肌の色の多様性を考慮して、現在欧米諸国では美白・白い肌を指す「whitening」「fairness」「lightening」といった表記を取りやめた化粧品ブランドが多数あります。日本でも、今年3月に花王が「美白」という表記を取りやめることを発表しました。

こういった商品の説明を翻訳する際には、原文にとらわれることなく、商品の持つ効果や特質を考慮しながら文章自体を工夫する必要があります。

3. 単数形の「they」

日本語では彼、彼女、といったように、三人称の代名詞として、男性はhe、女性はsheと使い分けるのが一般的な用法でしたが、近年では男性でも女性でもないという性自認を持つ個人(ノンバイナリー)について「they」が使われるようになっています。

例えば、ノンバイナリーであるRobinという人物について紹介する場合。

“This is Robin. They work at this company.”というふうに言えば、「こちらはロビン。この人(they)はこの会社で働いています。」と、他者に勝手に性別を決められることなく、heやsheを使わずとも、個人について説明出来るようになります。

翻訳では、読み手への「配慮」も必要不可欠

文化の違いから、私達日本人にはまだ気づけないことがたくさんあるでしょう。しかしながら、日々めまぐるしく様々なことが変化する時代において、翻訳においては読解力や表現力といった言語スキルだけでなく、時代の変化にアンテナを張り、それに対応していく姿勢も求められます。

このポリティカル・コレクトネスは、「言葉狩り」とも揶揄され、反論している人々も多くいるのは事実ですが、いつでも伝え手を配慮する姿勢は重要であり、今後も尊重されるべき概念と考えています。

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英語ナレーションにおける日本語固有名詞の発音について

英語ナレーション収録における日本語発音の難しさ

日本人が英語を発音する時、LとRの発音の使い分けやthの発音など、英語ネイティブ同様の発音再現が難しいと言われている音がいくつかあります。同様に、英語ネイティブにとっても、発音の再現が難しい日本語の音が存在します。

日本語ナレーションをもとに英語ナレーションを制作する際、例えば企業VPでは日本語の社名、博物館や美術館の音声ガイドでは人物名等、英語ナレーション台本に日本語固有名詞が含まれることが多々ありますが、英語ナレーターにそのまま読んでもらうと、こちらが期待している通りに発音できないことがほとんどです。日本語と英語では、音の違いが存在するからです。

今回は、英語ナレーターが発音しづらい日本語の音について、正しく発音してもらうための対策と併せて解説していきます。

1. 促音・長音・拗音

これら3つの音は英語には存在しない音で、英語ネイティブにとっては発音しづらいと言われています。

・促音:「がっき(楽器)」「ラッパ」など、小さい「っ」が入った音

・長音:「おかあさん」「おばあさん」など、「ー」でも書き表される、母音を通常の倍にのばした音

・拗音:「きょ」など、小さい「ゃ」行の音が付くような音

2. ローマ字の発音と英語発音の違い

日本人にとってのローマ字の発音が、英語では異なる発音になる場合が多々あります。

例えば「ri」の発音。女性の名前「Rika(リカ)」を英語ネイティブが発音するとなった場合、英語では「ri」の発音は基本的に「ライ」となるため、「ライカ」と読まれてしまうことがほとんどです。

他にも、「ke」の発音は「ケ」ではなく「キ」の発音であったり、「chi」の発音が「チ」ではなく「キ」の発音であったり等、日本人が認識しているローマ字発音が、英語ネイティブとは同じではないケースが多々あります。

3. イントネーション・アクセント

日本語は、単語にイントネーションやアクセントをつけず、抑揚なくフラットに発音する言語であるのに対し、英語は明確にイントネーションやアクセントをつけて発音する言語です。そのため、英語ナレーターにとって、日本人が話すようなフラットなイントネーション・アクセントを再現することは非常に困難です。

もちろん日本語に慣れている、もしくは日本語が話せる英語ナレーターであれば、実際の日本人同様に日本語固有名詞を発音出来ると思いますが、日本語に慣れていない英語ネイティブにとっては、上記のような音の違いがあるという事実を理解していない限り、ほとんどの場合が間違った発音で読んでしまいます。

このことから、日本語固有名詞を含む英語ナレーション収録の現場では、事前に以下のような準備が必要となります。

1. 発音指導

収録前にナレーターと読み合わせを行い、正しい発音を指導します。オンラインで顔を合わせて発音の摺合せが出来れば理想的ですが、時間等の制約の関係で読み合わせが叶わない場合は、日本語固有名詞を読み上げた録音データを送って、参考にしてもらう場合もあります。

2. スペルの書き換え

英語ナレーターが初見で発音を正しく認識出来るよう、原稿上の日本語固有名詞のスペルを書き換えます。例えば、上述した「Rika」を「リカ」と発音して欲しい場合は、実際の英語の音を考慮して「Lika」と書き換えます。ただ、書き換えるだけでは不十分な場合も多いので、「LipのLiと同じ音」といったように、フォニックスの例を用いた解説を付け加えるとこちらの意図が伝わりやすくなります。

3. スペイン語を話せる英語ナレーターを採用する

スペイン語は、母音が日本語と同じ’a’, ‘e’, ‘i’, ‘o’, ‘u’の5つであるため、スペイン人は日本語の発音がしやすいと言われています。そのため、特に指導や原稿の書き換えを行わずとも、台本を初見で正しく日本語の発音が出来るナレーターが比較的多い傾向があります。

一方で、こだわりすぎないことも実は重要

日本人の観点としては、社名や商品名等の日本語固有名詞は大切なものであるからこそ、「日本人の発音と全く同じ発音を再現してほしい」という考えが根底にあることはよく理解できます。

しかしながら、日本人がこだわる程、日本語の発音の「正しさ」は英語ナレーションにおいては意味を成さないというのが実際のところです。

日本における英語の発音について同じことが言えます。日本においても商品名や会社名をはじめとした英語固有名詞を日常的に耳にしますが、日本で浸透している発音と、英語ネイティブによる発音は異なることが分かります。

実際の例を、各ブランドの公式CMと共に見てみましょう。

例1:MacDonald’s (日本語:マクドナルド 英語:マックダーノーズ)

例2:IKEA(日本語:イケア 英語:アイキーア)

例3:Costco (日本語:コストコ 英語:コスコ)

上記の英語は、すべて日本語のローマ字発音に基づいて日本における発音が定着されているものです。仮に、IKEAの発音が「イケア」として浸透している日本において、CM等でIKEAが「アイキーア」として発音されると、多くの人にとって困惑が生まれることが容易に想像出来ます。

以上の理由より、海外市場において日本語の社名や商品名が定着していない限り、最低限の発音は押さえつつ、細かな子音の発音やアクセント位置については、プロの英語ナレーターの意見も取り入れることが、海外向けにローカライズされた英語ナレーションを制作する上で重要なポイントとなります。