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思索するための大変良い刺激になった本でしたので、 記憶としてしっかり留めておくために感想を記します。 shin-kankorikkoku.jpg 著者のデービッド・アトキンソン氏はイギリス出身ながら 文化財の修理や施工をする会社の代表取締役と務めています。 2006年まではゴールドマンサックスでアナリストをしていたという 異色の経歴の持ち主です。日本には25年以上もの長きに渡り住んでいます。 本書は日本の伝統文化の状況を熟知し、 非常に高い分析能力を持った英語圏出身の人が書いた、 日本に対する観光立国に向けた提言です。 私が特に印象に残ったポイントをまとめてみます。 ●観光立国が持つ4条件 観光立国のための4条件は「気候」「自然」「文化」「食事」。 日本はこの4条件を持つ稀有な国である。 ●お客様(海外旅客)の満足を追求するべき 日本の「おもてなし」は大変素晴らしいものであるが、 日本人が喜ぶものを海外旅客が同様に喜ぶとは限らない。 国や性別、年齢ごとに指向や習慣が異なるわけなので、 ターゲットに合わせたサービスを提供しなければ、 確かな満足を得ることは難しい。リピーターの創出に繋がらない。 ●上から目線の姿勢を改めるべき 「おもてなし」を促進からは、 日本のサービスは今のままでの世界の旅客に受け入れられる という過度の自信が感じられる。 実際に日本に訪れる観光客数はTOP 10にも入らないレベルで、 世界的に見ればまだまだ人気があるとは言えない。 「来ていただく」という姿勢をもっと強めないといけない。 ●滞在日数が長い旅客をターゲットにするべき 旅行中にお金を使うのは主に宿泊費と食事代。 滞在日数が長いほど日本の観光収入が増えるのは明白なので、 滞在日数が長い旅客をターゲットにし戦略は立てるべき。 ●滞在日数が長いのは遠方からの旅客 データでみると日本の近隣国の人々は滞在日数が短く、 遠方の国々――アメリカやヨーロッパ、オーストラリア――は滞在日数が長い。 オーストラリアは一度の旅行で滞在日数が世界で最も長い。 それは、オーストラリアがどこへ行くにも距離が遠いので、 一度旅行に出ると長い期間になることが多いからだ。 ●文化財をもっと活用すべき 欧米の30代以上の人たちは日本文化や伝統への関心がとても高い。 しかし、いざ日本の施設に行ってみても情報が圧倒的に少なく、 真の魅力を伝えているとは言えない。 日本の文化財は知れば知るほど「すごい!」と感じるものが多いので、 もっともっと伝える努力をすべきだ。 私の仕事でも、外国人の目線になって、外国人旅客受入環境の整備や 外国語による情報発信をしなければいけないと常々考えているのですが、 日本人である自分にとって「外国人目線で考える」というのが難しいところがあります。。。 本書はそういった外国人目線の大切さを伝えるとともに、顧客が誰かを明確にし、その顧客に喜んでもらい、どうやって利益を獲得していくか、というビジネスの王道を進めば日本の観光産業の発展が導かれるだろう、と力強く前向きな提言をしています。 日本人では書くことができない有益な情報が詰まった本であり、関係各位に大いにオススメしたい一冊として、ご紹介させていただきました。