ARTICLES インバウンド対策は、翻訳ではなく、「執筆」の時代へ



観光地に設置されているARやVR、音声ガイド。
これらは、視覚的情報から疑似体験を得られたり、文字情報のみならず聴覚を通して情報を得られたりすることから、
近年美術館をはじめとした観光地に設置されることが増えており、多言語化も進んでいます。
同時に、来日予定者の旅行気運を醸成する目的で、多言語化されたプロモーション映像を各都道府県が制作する動きも活発になっています。


このような多言語コンテンツを作成する際、元々は日本語で作成された文章を多言語へ翻訳するというフローを踏んでいましたが、
現在、観光庁、文化庁、環境省が多言語解説整備事業を実施し、
翻訳ではなく、各言語のネイティブライターによる解説文の作成、「インバウンド向け英文ライティング」を推進しています。


  • インバウンド向けライティングとは

現在日本政府は、2030 年までに訪日外国人旅行者を 6,000 万人に増やす目標を掲げ、
官民を挙げて施策に取り組んでいますが、訪日外国人旅行者に満足して帰っていただくためには、
外国人に文化、歴史、自然等の観光資源の魅力を十分に感じてもらうことが重要です。
そのために、観光系の紹介媒体においては、翻訳ではなく、各言語のネイティブライターによる解説文の作成を推進しています。
外国人にとって分かりやすい文章は外国人観光客の興味をひくこと、また、日本への理解を深めることに繋がり、そのことで滞在期間も長くなり、
経済波及効果が大きくなることが期待できると言われています。


Localifyの運営会社であるエクスプレッションズでは、ライターによる現地取材を通し、
石川県の公式SNSの英文ライティングを始め、動画や音声ガイドにおいても英文執筆事業を展開しています。
そこで、今回は動画・音声コンテンツ分野における「執筆」がもたらす効果を、翻訳との違いと比較しながら、解説していきます。


「外国人視点」での情報発信を実現

インバウンド分野において、これまで翻訳を行う際にハードルとなっていたのが
「日本人と外国人の視点が異なる」という点でした。
これまでは、日本人向けの和文を翻訳したものが大半であり、日本に関する予備知識があることを前提にしていたため、
外国人にとっては分かりにくいものになっていたのです。
そのため、「外国人観光客は日本に関する基礎知識がない」という大前提に立ってテキストを作成することが非常に重要です。
外国人にとって分かりやすい文章は外国人観光客の興味をひくこと、また、日本への理解を深めることに繋がり、
そのことで滞在期間も長くなり、経済波及効果が大きくなることが期待できると言われています。


新たな観光資源の掘り起こし

日本人からみると見慣れている景色や場所、文化について、
日本とは異なる価値観やライフスタイルを持つ外国人にとっては興味深く、魅力的に映る場合があります。
文化財や自然といったさまざまな観光地に外国人のライターが自ら取材に赴き、
自らの体感を通して完成した解説文は、外国人にとってわかりやすいだけではなく、日本人にとっての「当たり前」という常識を覆す新たな気づきを与え、
今まで埋もれていた観光資源の発見にもつながるといったシナジー効果も期待できます。


媒体に応じた文体の調整

媒体やコンテンツのターゲット層に応じて、届けたいメッセージが異なるため、
用途に応じた文章のトーンや表現の調整が必要となります。特に観光プロモーション映像においては、
その場所に行ってみたい気持ちを誘発させるキャッチコピーや、訴求力の高い表現が求められます。
また、AR/VRや音声ガイドにおいては、限られた時間に使用されることが多いため、情報を詰め込みすぎないこと、
また、混同しやすい表現(同音異義語など)は避けることなどが重視されています。
英文ライティングでは、原文となる日本語にとらわれることがないことから、自由度を確保しながら作業が可能となり、完成度の高い英文を提供することができます。


執筆の新たな可能性

執筆は、外国人の立場に立った表現を提供するという点で質の高い成果物を提供できるというメリットだけでなく、
依頼者が日本語原稿を作成する手間が省けるといったアドバンテージも存在します。
今回はインバウンドを例に解説しましたが、勿論インバウンドのみならず、
他の分野においても、多くのメリットが得られる結果となることから、将来性の高い分野であると考えています。