金沢市内インバウンド体制強化事業
| 株式会社日本エージェンシー様 |
| 広告代理店 |
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コンサルティング(調査・企画)・翻訳・セミナー |

Overview 概要
近年、石川県内を訪れるインバウンド旅行者は増加しているものの、その滞在期間は短く、消費額も低いことが課題となっています。そこで、地域の飲食店やショッピングに関する情報を、英語で効果的かつ包括的に発信することで、インバウンド旅行者の消費を促進することを目的に、インバウンド旅行者向け金沢市商店街情報発信サイト「Shoppers’ and Foodies’ Guide to Kanazawa」が開設されました。当社は本事業において、Webサイトの英語翻訳および情報設計に関するコンサルティングを担当し、インバウンド旅行者の視点に立った情報の発信支援を行いました。
また、インバウンドフレンドリーな街づくりの一環として、商店街や百貨店、ショッピングモールに入っている飲食店や小売店の従業員を対象に、インバウンド受け入れに関するセミナーも実施されました。当社は講師として登壇し、情報発信ツールの整備や多言語対応のヒント、受け入れ時のマインドセットなど、実践的な視点に基づく講義を提供しました。
Work Details 当社の取組み
アンケート調査
インバウンド体制強化の方向性を定めるにあたり、まずは訪日旅行者が日本の受け入れ対応に対してどのような期待を抱いているのかを把握することから着手しました。当社では、金沢駅「あんと」に人員を配置し、訪日旅行者への声かけおよびアンケートの実施を行いました。2日間で50名以上から回答を得ることができ、その結果を日本語で取りまとめ、顧客と共有しました。アンケート結果からは、日本のサービスが非常に高く評価されていること、また言語対応に関しては翻訳アプリの普及により、大きな課題とは認識されていないことが明らかとなりました。さらに、訪日旅行者が旅先で、店選びや行き先を決定する際に利用している検索ツールや口コミサイトの傾向も把握し、それらの活用・拡充に向けた方策を、今回のセミナー内容に反映させました。


コンサルティング
当社には外国出身のスタッフが複数在籍しており、日本人スタッフも日頃からインバウンド業務に携わっています。こうした多様なバックグラウンドと現場経験を強みとして、訪日旅行者のリアルな声をタイムリーに拾い上げ、それをサービスや施策に反映させています。今回のWebサイト構築においても、インバウンド旅行者の視点を軸に、デザイン・構成・情報の3つの観点から多角的なご提案を行いました。
・デザイン面
日本国内では一般的に用いられる「〇」や「×」といった記号が、英語圏では意図通りに受け取られないケースがあるため、文化的背景を考慮した代替表現や視覚表現のご提案を行いました。
・構成面
たとえば、日本における「洋食」というカテゴリが、海外では必ずしも “Western food” として理解されない*1といった認識のギャップに配慮し、訪日旅行者にとって直感的でわかりやすい店舗分類やナビゲーション構成を目指しました。
・情報面
基本的な店舗情報に加え、支払方法・Wi-Fiの有無・ベジタリアン対応・多言語対応・ファミリー対応・予約の必要性など、訪日旅行者が実用的に知りたい情報を簡潔に網羅しました。また、閲覧者の多くが土地勘を持たないことを踏まえ、各店舗のGoogle Mapリンクを設置し、ワンクリックで位置や詳細を確認できる導線を設けています。
*1:日本でいう「洋食」は、欧米由来の料理を日本風にアレンジした独自のジャンル(例:オムライス、ハンバーグ)です。しかし、英語で “Western food” と表現すると、欧米の旅行者にとっては自国の一般的な食事を指すため、誤解を招く可能性があります。
英語翻訳
インバウンド旅行者のニーズに最適化するため、ローカライゼーションの要素を多く取り入れました。
例えば、エリア区分に関しては、町名のみでは位置関係が伝わりにくいため、旅行者にとって認識しやすい観光名所を基準としたエリア分けを行いました。また、食に関する情報では、日本特有の料理が多く含まれているため、インバウンド旅行者にとって馴染みのないメニューについては、「何から作られているのか」「どのような味・特徴があるのか」といった補足情報を加え、理解を助ける工夫を施しています。
セミナーの実施
今回のセミナーでは、インバウンド旅行者の集客に効果的な情報発信ツールの整備・拡充と、実際に旅行者が来店した際の対応に向けて、メニューやPOPなどのツール準備における注意点を主なテーマとして取り上げました。
講師は当社のインバウンド部門マネージャーのアナスタシアが務めました。アナスタシアは長年石川県に在住し、日本文化に深くなじんでいる一方で、外国出身者ならではの視点も併せ持っています。さらに、インバウンド対応の現場で豊富なガイド経験を持ち、受け入れ側の課題と旅行者側のニーズの両方を熟知しているため、実践的かつ具体的な知見に基づいた内容が共有されました。
セミナー中には参加者から多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがえました。
Summary まとめ
本事業では、「インバウンド旅行者の消費を促進したい」という地域の課題と、「インバウンド対応に不安がある」という事業者の課題、双方に寄り添ったアプローチが求められました。当社は、コンサルタントおよびセミナー講師として本事業に参画し、日頃から翻訳やガイディング業務を通じて得ている一次情報や現場感覚をもとに、旅行者のリアルな声を反映した支援を行うことができたと考えています。
今後も、ツアー現場や宿泊施設での受け入れ対応を通じて蓄積される知見を活かし、地域全体のインバウンド対応力の強化に貢献できるよう取り組んでまいります。