金沢駅 伝統工芸パネル多言語翻訳
| 石川県企画振興部様 |
| 自治体 |
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英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語の翻訳 |

Overview 概要
2015年の北陸新幹線開業にあたり、石川の玄関口となる金沢駅で、金沢の伝統工芸パネルの設置が決まりました。本事業では、海外からの観光客増加を見越して、英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語の翻訳を手掛けました。
制作から10年以上経った今でも色褪せることなく設置されており、多くの来訪者の目に触れています。
Work Details 当社の取組み
事前リサーチ:石川の玄関口にふさわしい言葉を
本件のパネルは駅構内の柱に設置するため、日本語に加えて4言語を掲載するにはスペースの制約が大きいものでした。そこで、翻訳者自身が現地の設置場所を見ることで、翻訳後の文字数を把握することから始めました。現地の状況を知り「石川の玄関口に相応しい訳調はどんなものか」など具体的にイメージしました。
本件のような伝統工芸のトピックでは、日本語特有の表現や技法についての専門用語が多く含まれます。それらの適切な訳出には正しい理解が欠かせないため、翻訳対象の工芸品に関する書籍や資料、オンライン情報など、さまざまな方法で綿密なリサーチを行いました。
翻訳:文化の橋渡しは、言葉の工夫から
観光地にある解説文の多くは、もともと日本人向けに作られた日本語を翻訳したものであり、読み手側に歴史・文化的な背景知識がある前提で書かれています。そのため、日本人には理解できても、外国人にとっては分かりづらい内容であるケースが少なくありません。例えば「江戸時代」と書かれていても、多くの外国人にはいつの時代なのか分からないのです。このように「外国人観光客には日本についての知識が少ない」という前提に立ち、単なる翻訳に留まらず、丁寧で分かりやすい解説を意識しました。
また、本件ではスペースに制約があったため、限られた文字数の中で必要とされる解説を適切に盛り込み「読みやすさと内容の正確さを両立させる」という目標がありましたが、翻訳者たちの力量が問われる場面となりました。
校正:公共性に応える品質
誤字脱字のチェックに加え、バイリンガルの日本人チェッカーからも「解釈に齟齬はないか、より原文に忠実な表現はないか」を確認しました。本件では同じパネル内に多言語が並ぶため、「言語間で表記の不統一がないか」等も注意しました。
また、通常は「翻訳→校正」のフローで作業完了ですが、本件は公共物であり、多くの人に見られると想定しました。そこで、さらに1工程を加え、ネイティブの翻訳者により磨き上げを行っています。ここで補足情報の追加や、より自然で分かりやすい表現がないかを追求するなど、日本文化に詳しくない人が見ても理解しやすいよう改善しました。
DTP・レイアウトチェック:翻訳とデザインの橋渡し
原文は同じ日本語でも、言語によって翻訳後の文字数が異なります。多言語DTPでは「英語だけ極端にサイズが小さい」など、言語間での見た目に大きく差が出ないように気をつけています。DTPの後にもネイティブがレイアウトを確認することで、各言語のルールに沿ってローカライズされた成果物に仕上げました。
Summary まとめ
本件では、①駅内の公共物に相応しいクオリティで、②文字数を考慮しつつ③歴史ある伝統工芸品について分かりやすい翻訳を提供する、という3点に注力しました。
エクスプレッションズでは読み手に寄り添い「ユニークな日本の文化をより分かりやすく」という点を重視しています。本件以降も、現在まで多くの歴史・美術・観光関連の翻訳を重ねてきました。「価値ある日本文化を世界へ発信するには、どの表現がベストなのか」、試行錯誤しながら成長を続けています。